栄養は食べ合わせで変わる?|一緒に食べることで変わる栄養素の吸収

「ほうれん草には鉄が多いから、ほうれん草を食べれば鉄を十分に摂れる」
「カルシウムを摂るなら、カルシウムの多い食品だけを食べればいい」
栄養について考えると、つい「その食品に何が入っているか」だけに注目してしまいます。
しかし、食品に含まれている栄養素が、すべてそのまま体内で利用されるわけではありません。
栄養素によっては、一緒に食べる食品や調理方法などによって、吸収されやすさが変わることがあります。
今回は、知っておくと役立つ「食べ合わせ」と栄養素の関係について見ていきましょう。
「含まれている量」と「吸収される量」は違う
食品の栄養成分表示を見ると、
「カルシウム○mg」
「鉄○mg」
などと書かれています。
しかし、食品に含まれている栄養素のすべてが体内に吸収されるわけではありません。
栄養素の種類や食品の状態によって、消化管から吸収される割合は異なります。
さらに、
- 一緒に食べた食品
- 調理方法
- その人の栄養状態
- 年齢
- 体の状態
などによっても変わる場合があります。
そのため、栄養を考えるときには、「食品に含まれている量=そのまま体で使える量」ではないことを知っておきましょう。
鉄+ビタミンC
食べ合わせの代表的な例が、鉄とビタミンCです。食品に含まれる鉄は、大きく、
ヘム鉄
非ヘム鉄
に分けられます。
肉や魚などの動物性食品に含まれる鉄の一部はヘム鉄です。
一方、野菜や豆類などに含まれる鉄は主に非ヘム鉄です。
非ヘム鉄は、ヘム鉄と比べて吸収されにくいという特徴があります。
そこで関係するのがビタミンCです。
ビタミンCは、非ヘム鉄を吸収されやすい形にするのを助けます。
どんな組み合わせがある?
例えば、
豆類+ピーマン
小松菜+果物
大豆製品+ブロッコリー
など、鉄を含む植物性食品とビタミンCを含む食品を組み合わせる方法があります。
もちろん、「この組み合わせでなければ鉄は吸収されない」という意味ではありません。
一回の食事だけにこだわる必要もありません。
さまざまな食品を組み合わせる食生活が、結果として栄養素を効率よく利用することにもつながります。
カルシウム+ビタミンD
もう一つ代表的なのが、カルシウムとビタミンDです。
カルシウムは骨や歯の材料になるほか、筋肉や神経の働きにも関係しています。
そして、ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収に関係しています。
カルシウムを多く含む食品には、
- 牛乳・乳製品
- 小魚
- 大豆製品
- 一部の野菜
などがあります。
ビタミンDは、魚類やきのこ類などに含まれています。
「牛乳だけ飲めば骨が丈夫になる」ではない
骨の健康というと、カルシウム=牛乳というイメージが強いかもしれません。
しかし、骨の健康はカルシウムだけで決まるわけではありません。
ビタミンDをはじめとする栄養素、運動、年齢、ホルモンなど、さまざまな要因が関係しています。
つまり、「この食品を食べれば骨が丈夫になる」と一つの食品だけに期待するのではなく、食事や生活全体から考えることが重要です。
脂溶性ビタミン+脂質
ビタミンには、
水溶性ビタミン
脂溶性ビタミン
があります。
脂溶性ビタミンは、ビタミンA・D・E・Kの4種類です。
これらは脂に溶けやすい性質を持ち、食事中の脂質と一緒に摂ることで吸収されやすくなります。
例えば、緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンなども、油を使って調理することで体内に吸収されやすくなる場合があります。
野菜は「油を使わないほうが健康」とは限らない
油には「太る」「体に悪い」というイメージがあるため、「野菜はドレッシングなしで食べたほうが健康的」と思う人もいるでしょう。
しかし、脂質も必要な栄養素です。
さらに、野菜に含まれる一部の脂溶性成分は、脂質と一緒に摂ることで利用されやすくなります。
もちろん油を大量に使う必要はありません。
大切なのは、「油を使う=不健康」と単純に判断しないことです。
ビタミンDは食事だけではない
ビタミンDには少し変わった特徴があります。
魚やきのこなどの食品から摂るだけでなく、皮膚が紫外線を受けることで体内でもつくられます。
つまり、栄養状態は必ずしも食べ物だけで決まるわけではありません。
食生活に加えて、生活環境や日々の活動なども関係します。
栄養を考えるときには、こうした視点も大切です。
反対に「吸収を妨げる」組み合わせもある?
食べ合わせによって、栄養素の吸収が低下することもあります。
例えば、植物性食品に含まれるフィチン酸は、鉄や亜鉛などのミネラルの吸収に影響することがあります。
また、お茶やコーヒーなどに含まれるポリフェノールの一部も、非ヘム鉄の吸収に影響することがあります。
こう聞くと、「では、お茶や豆類は避けたほうがいいの?」と思うかもしれません。
しかし、そう単純ではありません。
「吸収を妨げる食品=悪い食品」ではない
例えば豆類には、フィチン酸だけが含まれているわけではありません。
たんぱく質や食物繊維、ビタミン、ミネラルなど、さまざまな栄養成分を含んでいます。
お茶やコーヒーにも、それぞれ特徴があります。
食品には非常に多くの成分が含まれているため、「ある栄養素の吸収を少し下げる可能性がある=その食品は体に悪い」とはいえません。
通常の食生活では、一つの成分だけを恐れて特定の食品を極端に避ける必要はありません。
調理方法でも栄養の利用され方は変わる
栄養素の利用され方は、食べ合わせだけでなく調理方法によっても変化します。
例えば、野菜を加熱することで細胞の構造が変化し、一部の成分が利用されやすくなる場合があります。
一方で、水溶性ビタミンなどは、茹でることで茹で汁へ溶け出したり、加熱によって減少したりすることがあります。
だからといって、「生野菜が一番」「加熱した野菜が一番」と決める必要はありません。
生、煮る、焼く、蒸す、炒めるなど、さまざまな調理方法を組み合わせることができます。
「最強の食べ合わせ」を探す必要はない
インターネットでは、「○○と△△を一緒に食べると栄養効果が倍増!」「絶対に一緒に食べてはいけない食品」といった情報を見かけることがあります。
確かに、栄養素同士の相互作用は存在します。
しかし、私たちは一日に一種類の食品だけを食べているわけではありません。
朝食、昼食、夕食、間食などを通して、多くの食品を食べています。
そのため、健康な人が通常の食生活を送る場合には、一つ一つの組み合わせを細かく計算する必要はありません。
サプリメントでは注意が必要な場合も
通常の食品とは異なり、サプリメントでは特定の栄養素を高濃度で摂取することがあります。
そのため、栄養素同士の相互作用や薬との相互作用が問題になる場合があります。
例えば、
「自然由来だから安全」
「ビタミンだから薬と一緒に飲んでも大丈夫」
とは限りません。
薬を使用している人や治療中の人がサプリメントや健康食品を利用する場合は、医師や薬剤師などに確認することが大切です。
食べ合わせより大切なこと
食べ合わせを知ることは、栄養を理解するうえで役立ちます。
しかし、それ以上に大切なのは、さまざまな食品を食べることです。
主食だけ。
肉だけ。
野菜だけ。
特定の健康食品だけ。
という食生活では、摂れる栄養素も偏りやすくなります。
いろいろな食品を組み合わせることで、結果として栄養素同士の働きを生かすことにもつながります。
まとめ
栄養素は、食品に含まれている量がそのまますべて体内で利用されるわけではありません。
一緒に食べる食品や調理方法などによって、吸収されやすさが変化する場合があります。
代表的な例として、
鉄+ビタミンC
カルシウム+ビタミンD
脂溶性ビタミン+脂質
などがあります。
一方で、栄養素の吸収を妨げる成分も存在します。
しかし、一つ一つの食べ合わせを気にしすぎる必要はありません。
大切なのは、「最強の組み合わせ」を探すことではなく、さまざまな食品を組み合わせた食生活を続けることです。
栄養素は単独で働いているのではなく、互いに関係しながら私たちの体を支えています。

