食品添加物は本当に危険なの?|安全性はどう考えればいい?

「食品添加物は体に悪い」
「できるだけ添加物の入っていない食品を選んだほうがいい」

食品添加物について調べると、このような情報を目にすることがあります。
一方で、日本で使用される食品添加物には安全性に関する評価や使用基準などが設けられています。
では、食品添加物は「安全」なのでしょうか。それとも「危険」なのでしょうか。
この問題を理解するうえで重要なのが、物質そのものの性質だけでなく、どのくらいの量を摂取するのかを考えることです。
今回は、食品添加物の「安全性」をどのように考えればよいのか見ていきましょう。


「危険性」と「リスク」は少し違う

食品添加物の安全性を考えるときに知っておきたいのが、「ハザード(危害要因)」と「リスク」という考え方です。
簡単にいうと、

ハザード:その物質が持っている、健康に悪影響を及ぼす可能性

リスク:実際の摂取量などを考えたときに、健康への悪影響が起こる可能性

です。
ある物質に有害な作用があるからといって、通常の摂取量でも同じように健康への悪影響が起こるとは限りません。


大切なのは「量」

これは食品添加物だけに限った話ではありません。
例えば、私たちが生きるために欠かせない水でも、極端に大量に摂取すれば体に問題を起こすことがあります。
食塩も体に必要な成分ですが、長期間にわたる過剰摂取は健康上の問題につながります。
つまり、「その物質が存在するかどうか」だけでなく、「どのくらい摂取するのか」を見ることが重要です。
食品添加物についても同じ考え方が基本になります。


食品添加物はどのように安全性を確認している?

日本では、食品添加物について科学的な知見に基づいた安全性評価が行われています。
食品添加物の種類によって必要な評価は異なりますが、

  • 体内でどのように吸収・代謝されるか
  • 繰り返し摂取した場合の影響
  • 遺伝毒性
  • 発がん性
  • 生殖や発生への影響

など、さまざまなデータが検討されます。
そして、安全性評価の結果などを踏まえて、必要に応じて使用できる食品や使用量などの基準が定められます。


動物実験の結果をそのまま人間に当てはめるの?

食品添加物について、「動物実験で異常が出た」という情報を見かけることがあります。
ここで注意したいのが、どのくらいの量を与えた実験なのかという点です。
安全性を調べるための試験では、通常の食生活では摂取しないような量まで含めて影響を調べることがあります。
そのため、「動物実験で影響が確認された=通常の食品から摂取する量でも人間に同じ影響が起こる」とは限りません。
実験結果を見るときには、量や条件まで確認する必要があります。


「影響が確認されなかった量」を調べる

安全性評価では、一定の試験条件のもとで健康への悪影響が確認されなかった量などが検討されます。
そこから人間が日常的に摂取しても問題がないと考えられる量を設定するときには、動物と人間の違いや、人間同士の個人差なども考慮します。
そのために使われるのが、安全係数(不確実係数)という考え方です。


「安全係数」とは?

例えば、ある物質について動物試験などから健康への悪影響が確認されなかった量が得られたとします。
その量を、そのまま人間の摂取量として採用するわけではありません。
一般的には、動物と人間の違いさらに、人間同士の個人差などを考慮して、不確実性を見込んだ値が設定されます。
物質やデータによって扱いは異なりますが、100という安全係数が用いられることもあります。
こうして安全側に余裕を持たせながら、一日摂取許容量などが設定されます。


一日摂取許容量(ADI)とは?

前の記事でも少し紹介したのが、ADI(Acceptable Daily Intake:一日摂取許容量)です。
ADIとは、人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響がないと考えられる1日あたりの摂取量です。
通常は、体重1kgあたり○mg/日という形で示されます。
例えば体重によって、1日あたりの量も変わります。
ここで重要なのは、ADIが「ここを少しでも超えたら毒になる境界線」ではないことです。
安全性評価をもとに、不確実性も考慮して設定された値です。
ADIについては、この後の記事でさらに詳しく取り上げます。


「発がん性がある」という情報はどう見る?

食品添加物について特に不安になりやすいのが、「この添加物には発がん性がある」という情報です。
しかし、この言葉だけでは十分な情報とはいえません。
確認したいのは、

どの物質なのか
どのような研究なのか
人を対象にした研究なのか、動物実験なのか
どのくらいの量を摂取したのか
実際の食生活で摂取する量と比べてどうなのか

といった点です。
「発がん性」という強い言葉だけを切り取ると、実際のリスクとは異なる印象を持ってしまうことがあります。


「発がん性」と「がんになる確率」は同じではない

ここでもハザードとリスクの違いが重要になります。
ある物質に、特定の条件でがんを引き起こす可能性が示されていることと、通常の食生活でその物質を摂取することで、実際にがんになる可能性がどの程度高まるのかは別の問題です。
安全性を考えるためには、物質の性質だけではなく、人が実際にどのくらい摂取しているのかまで考える必要があります。


「海外で禁止されている添加物」は危険?

SNSなどでは、「海外では禁止されているのに、日本では使われている」という情報を見かけることがあります。
ただし、これだけで危険だと判断することはできません。

国や地域によって、

  • 食品添加物の分類
  • 使用できる食品
  • 使用量
  • 表示制度
  • 食文化や摂取状況
  • 規制の仕組み

などが異なるためです。
もちろん各国の規制や新しい研究結果を確認することは重要です。
しかし、「海外で禁止」という一言だけでは、その物質のリスクを判断するための情報として不十分です。
具体的にどの国の、どの制度で、どのような理由から規制されているのかを見る必要があります。


「昔から使われているから安全」でもない

反対に、「昔から使われているものだから大丈夫」と考えるのも注意が必要です。
科学的な知見は、新しい研究によって更新されていきます。
以前は分からなかったことが、その後の研究によって明らかになる場合もあります。
そのため、食品の安全性については、新しい科学的知見を踏まえながら評価や基準を見直していくことが重要です。


複数の食品添加物を一緒に摂っても大丈夫?

「一つ一つは安全でも、たくさんの添加物を一緒に食べたら危険なのでは?」という疑問を持つ人もいるでしょう。
確かに、複数の物質を同時に摂取した場合の影響について考えることは、食品安全の重要なテーマです。
一方で、「添加物を複数摂ったら必ず危険になる」と単純に考えることもできません。
物質ごとに体内での作用や代謝は異なります。
特定の組み合わせについて科学的な懸念が示されれば、その内容を個別に評価する必要があります。
「種類が多いから危険」という数だけの判断ではなく、具体的な物質・量・作用を見ることが重要です。


「ゼロリスク」は存在する?

食品の安全性について、「絶対に安全ですか?」という疑問が出てくることがあります。
しかし、科学の世界で将来にわたる「絶対にゼロ」を証明することは簡単ではありません。
これは食品添加物だけの問題ではありません。
天然の食品にも食中毒、アレルギー、自然毒などのリスクがあります。
だからこそ食品安全では、科学的なデータを集め、実際の摂取量などを考慮し、健康へのリスクを十分に低く管理するという考え方が重要になります。


「添加物を避けること」だけが健康管理ではない

食品添加物を気にすること自体が悪いわけではありません。
原材料表示を確認し、自分が食べているものについて知ろうとすることは大切です。
しかし、食品添加物を完全に避けることだけが健康的な食生活ではありません。

例えば、

野菜や果物がほとんどない
食塩を摂りすぎている
糖類の多い飲料を頻繁に飲んでいる
食事が特定の食品に偏っている

といった食生活全体の問題にも目を向ける必要があります。
一つの成分だけを見るのではなく、食生活全体から健康を考えることが大切です。


不安になる情報を見つけたら

SNSや動画で、「この添加物は危険」という情報を見つけたら、すぐに信じたり否定したりする前に、少し確認してみましょう。
見るポイントは、

どの物質について話しているのか

根拠となる研究は示されているか

どのくらいの量についての話なのか

動物実験なのか、人を対象とした研究なのか

公的機関の安全性評価ではどう扱われているのか

などです。
特に、物質名と摂取量が示されていない「危険」という情報には注意が必要です。


まとめ

食品添加物の安全性を考えるとき、「添加物だから危険」あるいは、「認められているから何も考えなくていい」という二つの極端な考え方だけでは、食品添加物を正しく理解することはできません。
重要なのは、

何という物質なのか
どのような作用があるのか
どのくらい摂取するのか
どのような科学的根拠があるのか

を見ることです。
食品の安全性は、「入っている・入っていない」だけではなく、量を含めたリスクで考えることが基本になります。
食品添加物を必要以上に怖がるのではなく、科学的な情報を確認しながら、自分で判断できる知識を身につけていきましょう。